立冬(りっとう)は、二十四節気という太陽の動きをもとにした季節の区分の一つで、黄経225度を太陽が通過する日が立冬の日です。
現在の暦(新暦=グレゴリオ暦)では、11月7日頃から11月21日頃までの約15日が立冬の時期です。
江戸時代まで使われていた旧暦(太陽太陰暦)では、10月・亥の月の正節(月の前半という意味)のため十月節立冬とも称しました。
立冬の季節
立冬に入ると、暦の上では季節は冬に入ります。
陽射しも弱まりだし、冬の気配が日一日と濃くなります。
冬の気圧配置にならないと吹かない強い北寄りの風、木枯らし1号が吹いたとニュースに流れる時期でもありますね。
北の地方からは、早くも初雪の便りが聞かれます。
立冬に入ったばかりは晩秋という風情ですが、立冬も終わりに近づく頃には暖房器具が出るというご家庭も多いことでしょう。
七十二候
二十四節気は、それぞれが約15日間ありますが、二十四節気をさらに3等分した七十二候という季節の区分があります。
立冬には、次の七十二候が含まれます。
立冬 初候 山茶始開(つばきはじめてひらく)
11月7日頃から11月11日頃まで。
山茶花(さざんか)が咲き始める頃です。
”山茶”と書いて、”つばき”と読ませるのは、中国では「山茶花」がツバキの総称だから。
立冬 次候 地始凍(ちはじめてこおる)
11月12日頃から11月16日頃まで。
季節が冬へと歩を進め、大地が凍てつき始めます。
夜の間に霜が降り、寒い地域では霜柱が見られる時期です。
立冬 末候 金盞香(きんせんかさく)
11月17日頃から11月21日頃まで。
水仙の花が咲き始めます。
「金盞」は、黄色の盃という意味ですが、水仙の異名として使われてきました。
立冬の食べ物
蜜柑(みかん)
現在日本で栽培されているみかんは、日本原産の温州みかん(うんしゅうみかん)です。
海外にも輸出されており、「Mikan」「Satsuma」として親しまれています。
収穫期の早いものは9月から出回りますが、本格的な旬は12月から2月にかけて。
蜜のように甘い柑橘だから、蜜柑(みかん)と呼ばれるようになったのだとか。
かつては、「こたつにみかん」は冬の定番の組み合わせでした。
しかし生活様式も変わり、スイーツの種類が増えた現代では、みかんの消費量は年々減少しています。
- コレステロールの値を下げる
- 発がん物質を抑制する
などの効果がみかんにあることが知られていましたが、最近では骨粗しょう症予防にも効果があることも分かってきました。
日本の伝統果物として、みかんの良さを見直したいですね。
小松菜
ご多分に漏れず、1年中、店頭に並ぶ小松菜ですが、本来の旬は11月から2月にかけて。
小松菜という名前は、江戸時代に東京都小松川付近で栽培されていたことから、八代将軍吉宗が命名したと伝わります。
江戸の庶民の間では、冬の貴重な黄緑色野菜として、冬菜・雪菜として親しまれてきました。
小松菜はカルシウムや鉄分などが豊富なことでも有名ですが、カルシウムを野菜の中ではケールに次いで多く含んでいます。
ほうれん草と比較されることも多いですが、ほうれん草よりもアクが少なく、炒めたり汁物の具として活躍の場面が多い野菜です。
慈姑(くわい)
茎の先に目が見えることが、「芽出たい(めでたい)」「芽が出る」縁起がいい食材として、くわいはお節料理には欠かせない食材の一つです。
9月から春先まで収穫されますが、くわいの流通のピークはやはり年始をはさむ11月から1月にかけて。
だし汁での含め煮が定番の調理方法ですが、原産地の中国では薄くスライスして野菜炒めの具にも使われます。
煮るとホクホクとした食感のくわいですが、炒めるとシャリシャリとした違った食感が楽しめます。
蓮根(れんこん)
字から蓮の根っこと思われがちですが、蓮の地下茎の部分に当たります。
晩秋から冬にかけてが、れんこんの粘りと甘みが増す美味しい季節です。
穴が開いていることから、「先の見通しが良い」として、くわいと同じくれんこんはお節料理に欠かせない縁起のいい食材ですね。
中国が原産地とされた時期もありましたが、諸説ありはっきりとしたことは分かっていません。
日本では、奈良時代にはれんこんの栽培が始まったと記録されますが収穫量が少ない品種だったようです。
明治初期に、中国から新たな品種が入ってきて以降、栽培が本格的になり広く流通するようになりました。
茶色く変色するためアク抜きして調理することが常識とされてきましたが、れんこんのアク成分が抗酸化作用のあるポリフェノールであることが分かってきました。
そのため、近ごろではれんこんもアク抜きをせずに調理すると常識が変わってきています。
アクを抜くとシャキシャキとした食感に、アクを抜かないともちもちとした食感になりますので、料理によって使い分けるといいですね。
かわはぎ
かわはぎの皮は丈夫でざらざらしているのですが、その皮が簡単にはがせることが「かわはぎ」という名前の由来です。
全国の沿岸に生息し、淡白で弾力のある白身と肝の美味しさから人気のある魚です。
年中通じで味が良いこともあり、かわはぎの旬は
- フグやヒラメといった白身魚の代用になるから夏
- 秋から冬にかけて肝が肥えるから冬
と異なる意見が併存しています。
立冬の時期の花
山茶花(さざんか)
中国でのツバキの総称である「山茶花(さんさか)」が転じて「さざんか」という名前になったと言われています。
さざんかとツバキの花は、とても似ているため見分けが難しいのですが、花の散り方に大きな違いがあります。
- ツバキは花ごと落ちる
- さざんかは花びらが1枚ずつ散る
ツバキより寒さに弱く、さざんかの野生種は四国・九州といった西日本でも暖かい地域にしか自生していません。
また野生のさざんかは五弁の白い花ですが、品種改良から薄いピンクや赤、八重咲といった園芸種が数多く生み出されています。
- ツバキ科の常緑広葉樹
- 原産地は日本
- 開花時期は10月から12月
水仙(すいせん)
お正月の花として、和のイメージが強い水仙ですが、意外にも遠く地中海沿岸の地が原産の花です。
日本へは、室町時代に中国を経て入ってきました。
ある程度気温が下がらないと咲かないため、水仙が咲くと本格的な冬が始まった合図です。
厳しい冬に咲く可憐な花として、「雪中花」という和名で呼ばれることもあります。
清楚な姿と香りが仙人のようであるとして中国で「水仙」と呼ばれるようになったものが、そのまま日本でも花の名前になりました。
- ヒガンバナ科の多年草
- 原産地はスペイン・ポルトガルなど地中海沿岸地域
- 開花時期は11月中旬から4月
柊(ひいらぎ)
ひいらぎは、固い葉のふちのギザギザがとげのようで、触ると痛いことから、痛いを意味する古語「ひいらぐ」が名前の由来とされています。
11月から12月に、小さな白い花が葉の付け根に隠れるように固まって咲いているのを見ることができます。
ひいらぎのとげは邪気をはらうとも考えられていたため、かつては生垣や庭木として鬼門や玄関の脇に植えられることが多かった木です。
節分のときにいわしの頭にひいらぎを刺す風習も、ひいらぎに邪気をはらう力があると信じられていたことから生まれました。
クリスマスに登場する赤い実のついているひいらぎは、イングリッシュホリデーという種類で、日本で邪気をはらうとされてきたひいらぎとは違う種類のものです。
- モクセイ科の常緑小高木
- 原産地は日本、台湾
- 開花時期は11月から12月
次の二十四節気は小雪(しょうせつ)です