白露(はくろ)は、二十四節気という太陽の動きをもとにした季節の区分の一つで、黄経165度を太陽が通過する日が白露の日です。
現在の暦(新暦=グレゴリオ暦)では、9月8日頃から9月22日頃までの約15日が白露の時期です。
江戸時代まで使われていた旧暦(太陽太陰暦)では、8月・酉の月の正節(月の前半という意味)のためが八月節白露とも称しました。
白露の季節
白露は、立秋から数えて3番目の秋の二十四節気です。
白露の時期、夜の気温が下がり始め、大気中の水蒸気が露となって草花に降りるようになります。
朝、草花の上に降りた露を見かけると、秋の深まりを感じざるを得ません。
明け方のひんやりとし出すと、日中の暑さもようやく和らぎ始めます。
空に目を転じれば、いつのまにか秋の雲が空に広がっていることにも気づくことが出来ます。
本格的な秋が始まろうとしています。
七十二候
二十四節気は、それぞれが約15日間ありますが、二十四節気をさらに3等分した七十二候という季節の区分があります。
白露には、次の七十二候が含まれます。
白露 初候 草露白(くさのつゆしろ)
9月8日頃から9月12日頃まで。
夜露が降りるようになり、草に降りた露が白く光って見える朝。
朝晩がめっきり涼しくなり、秋の気配を感じる頃ですね。
白露 次候 鶺鴒鳴(せきれいなく)
9月13日頃から9月17日頃まで。
水辺で暮らす鶺鴒(せきれい)が”チチィチチィ”と鳴き始める頃です。
鶺鴒は、イザナミとイザナギに夫婦和合を教えた鳥として日本神話に登場する鳥で、「恋教え鳥」とも呼ばれます。
白露 末候 玄鳥去(つばめさる)
9月18日頃から9月22日頃まで。
この頃、子育てを終えたツバメが、暖かい南の地域へと去っていきます。
次にツバメの姿を見るのは、来春まで待たなくてはなりません。
白露の食べ物
梨(なし)
梨は、中国原産ですが、日本には弥生時代には伝わり、日本書紀に登場するほど、古くから食べられてきた歴史のある果物です。
しゃきしゃきとした歯ざわりは、日本で栽培されてきた和梨ならではの食感。
品種改良も繰り返されており、明治時代に誕生したのが長十郎、二十世紀梨です。
現在、市場に多く出回っている幸水・新水・豊水は戦後になってから生まれた品種です。
水分が88%でビタミン類は多くはありませんが、疲労回復に効果のあるアスパラギン酸というアミノ酸が含まれており、夏の疲れを取るのにぴったりな秋の果物です。
ぶどう
ぶどうには大変多くの種類がありますが、秋に出回るぶどうはデラウェアという品種です。
ぶどうという果物と人類の付き合いは大変古く、紀元前3000年ごろには原産地であるコーカサス地方やカスピ海沿岸でヨーロッパブドウが栽培され、ワインの醸造が行われていました。
日本にも中国から東アジア系ヨーロッパブドウが伝わり自生していましたが、鎌倉時代初期に甲斐の国(現在の山梨県甲州市)で、甲州ブドウという品種の栽培が開始されました。
デラウェアは、アメリカ原産の種なしブドウ。
日本へは明治初期に伝わり、種なしブドウの定番として広く食べられるようになりました。
茄子(なす)
茄子(なす)の原産地は、インドです。
日本へは中国を経て渡来、奈良時代にはすでにナスの栽培が始まっていたと記録されています。
現在、日本で栽培されているナスの品種は、100種以上。長卵ナス、賀茂ナス、米ナスなどが有名ですね。
9月という晩夏とも初秋ともいえる時期が旬で、秋茄子という言葉があるほど、秋に収穫されるナスは実も締まり種が少なく美味しいとされてきました。
また秋茄子といえば有名なのが、「秋茄子は嫁に食わすな」ということわざ。
このことわざが意味するのは、
- 秋茄子は嫁に食わすのがもったいないぐらい美味しい
- ナスは身体を冷やすから嫁の身体を思って食べさせてはいけない
と全く違う解釈がありますが、それだけ秋茄子が美味しいということを表していると言えますね。
水分が多く、世界で一番栄養がない野菜なんていう不名誉な称号を与えられてこともあるナスですが、皮に含まれる紫紺色の色素・ナスニンは強い抗酸化作用を持つポリフェノールの一種であることが分かっています。
ごぼう
ごぼうの原種となる植物は、ユーラシア大陸の各地に広く自生していたとされます。
ごぼうが日本に伝わったとされる時期には幅があり、縄文時代とする説や平安時代に伝わったとする説があります。
伝わった当初は薬として用いられており、ごぼうを食べるようになったのは江戸時代から明治にかけてと最近のことです。
中国やヨーロッパでは、現在も薬用に栽培されており、食用として栽培しているのは日本と日本の植民地だった一部の地域に限られます。
夏が旬の新ごぼう、秋から冬が旬の滝川ごぼうがありますが、水溶性・不溶性の食物繊維を多く含み便秘の解消に力を発揮します。
以前は水にさらして調理するように言われていました。
ですが、さらし水を茶褐色に染める色こそがごぼうに含まれるクロロゲン酸というポリフェノールであることから、最近では皮を残して水にもさらさずに調理するようになっています。
白露の時期の花
女郎花(おみなえし)
十五夜に飾る秋の七草でもある女郎花(おみなえし)は、万葉集や源氏物語にも登場するほど古くから愛されてきました。
1mほどの背丈に、黄色い小花をいっぱい咲かせて秋の風になびく様子が素朴ながらも風情のある花です。
かつては各地の山野や草むらで咲く姿を楽しめる花でしたが、近年はすっかり見かけなくなってしまいました。
美女を圧倒する美しさという意味の「おみな圧し」が名前の由来であるともいわれています。
- オミナエシ科の多年草
- 原産地は日本、東アジア
- 開花時期は8月から10月
彼岸花(ひがんばな)
秋に田畑の畦道で咲く赤い花がひときわ目を引く彼岸花は、有史以前に中国から渡来し日本に根付いた帰化植物です。
仏教で天上に咲くという伝説の花の名前である曼殊沙華(まんじゅしゃげ)とも呼ばれることがあります。
曼殊沙華は白くて柔らかい花とされますので、どうして赤い彼岸花の別名になったのか不思議な話です。
彼岸花は根っこに毒があるため、モグラやねずみ、虫よけのために田畑の畦道や墓地に多く植えられてきました。
- ヒガンバナ科の多年草
- 原産地は中国
- 開花時期は9月
秋桜(こすもす)
秋の桜と書くコスモスですが、日本に入ってきたのは、比較的最近の幕末から明治初期のこと。
爽やかな秋空の下に可憐にゆれるコスモスの姿が、いかに短期間で日本人の心をとらえたかが分かりますね。
秋になると各地のコスモス畑が花盛りを迎え、薄いピンク、濃いピンク、白色の花が見る人を楽しませてくれます。
- キク科の一年草
- 原産地はメキシコ
- 開花時期は6月から11月
芙蓉(ふよう)
夏から秋にかけて、大輪の大きな花を咲かせる芙蓉は、室町時代には観賞用の庭木として栽培されてきた記録が残されています。
花の美しさから、美人を「芙蓉の顔(かんばせ)」と例えることもあるほどでした。
伊豆半島や紀伊半島などの山野に芙蓉が咲いていることがありますが、いずれも中国から伝わった花が野生化したものと考えられています。
- アオイ科の落葉低木
- 原産地は中国
- 開花時期は8月から10月
次の二十四節気は秋分(しゅうぶん)です