年中行事

芒種の食べ物と花~梅雨空に田植えが始まる二十四節気

芒種(ぼうしゅ)は、二十四節気という太陽の動きをもとにした季節の区分の一つで、黄経75度太陽が通過する日芒種の日です

現在の暦(新暦=グレゴリオ暦)では、6月6日頃から6月21日頃までの約15日が芒種の時期です。

江戸時代まで使われていた旧暦(太陽太陰暦)では、5月・午の月の正節(月の前半という意味)のため五月節芒種とも称しました。


芒種の季節

芒種~紫陽花
芒種は、立夏から数えて3番目の夏の二十四節気です。

芒種の時期、梅雨に入り雨が降り続く中、農家では田植えの準備で多忙を極めます。

針のようにとがっている稲の穂先部分を芒(のぎ)と言います。

芒種とは、芒(のぎ)のある稲などの穀類の種まきをする季節を意味しているのです。

芒(のぎ)には、動物に食べられることを防ぐ役割と、動物の毛に絡まって遠くまで種子を運んでもらうという目的があると言われています。

自然の摂理は、人知を超えていますね。

2024年蟄虫啓戸
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七十二候

二十四節気は、それぞれが約15日間ありますが、二十四節気をさらに3等分した七十二候という季節の区分があります。

芒種には、次の七十二候が含まれます。

芒種 初候 蟷螂生(かまきりしょうず)

6月6日頃から6月10日頃まで。

かまきりの幼虫が羽化して成虫になる頃です。

かまきりは、農作物をあらす害虫を餌とする益虫です。

芒種 次候 紅花栄(べにばなさかう)

6月11日頃から6月16日頃まで。

腐った草などの下でふ化した蛍が光を放ちながら飛ぶかう時期を迎えます。

芒種 末候 麦秋至(むぎのときいたる)

6月17日頃から6月21 日頃まで。

梅の実が熟し、薄い黄色に色づき始めます。

梅雨は、梅の実が熟す頃に降る雨であることから生まれた名称です。

芒種の食べ物

芒種の時期に解禁を迎えるのが鮎漁です。

水がきれいな河川で獲れる若鮎からは、スイカのような香りがするともいわれ、鮎は香魚(こうぎょ)とも呼ばれます。

また、ほとんどのが1年で一生を終えることから年魚と呼ばれることも。

初夏から夏にかけて旬を迎え、蓼酢を添えて食べる塩焼がの定番の食べ方です。

鮎

車海老

伊勢海老と並んで海老の中の高級食材である車海老は、6月頃が最も美味しい旬です。

かつては東京湾の浅瀬にも生息しており、江戸前の車海老と言えば最高級品とされていました。

現在では、大きな干潟がある伊勢湾や有明海で多く水揚げされています。

車海老

鱸(すずき)

初夏が旬のは、夏の白身魚の代表格です。

名前の由来としては、

  • すすいだように身が白い「ススギ」
  • 口がすさまじく大きい「スサマジグチ」
  • 出世魚で出世に進む「ススミ」

から転じたと、複数の説があります。

また成長するにつれて名前が変わる出世魚であり、大きさに応じて次のように名前が変わっていきます。

  • 体長が5cm前後のときはヒカリゴ
  • 10cm前後のときはコッパ
  • 1~2年魚もしくは25cm前後のときはセイゴ
  • 2~3年魚もしくは30~40cm前後の時はフッコ
  • 4年魚以上、体長60cmを超すスズキ

大きいものは1m近くまで成長し、10年近く生きるのだそうです。

鱸(すずき)

黒鯛

初夏から秋にかけて旬の黒鯛ですが、食材としてよりも釣り人からの人気が高い魚です。

警戒心が強く、釣りあげるのが難しいというのが釣りを楽しむ人の心をくすぐるのが理由のようですね。

黒鯛も先ほどの鱸(すずき)と同じく成長につれて名前が変わる出世魚。

呼び名が変わる基準は地域によってまちまちで、稚魚の間はチンチン、中ぐらいの大きさの時期はカイズもしくはチヌと呼び、大きいものを黒鯛と呼びます。

また、黒鯛は成長するとオスからメスに性別が変わる習性のある魚です。

2~3歳まではオスとして過ごし、多くの黒鯛が4~5歳になるとメスに変わります。

黒鯛

にんにく

輸入物もあり年中店頭に並んでいるにんにくですが、6月が収穫の最盛期です。

人類との付き合いも古く、紀元前3000年以上も前に古代エジプトやギリシャなどで、すでに薬用として栽培されていました。

にんにくの効用の第一にあげられるのは、強壮作用。

日本には奈良時代に、やはり薬用植物として伝わりました。

漢方における生薬名である大蒜(たいさん)と書いて、”にんにく”と読みますが、語源は困難を耐え忍ぶという仏教用語の「忍辱」とされています。

にんにく

芒種の時期の花

夏みかんの花

夏みかんの花

果実の収穫は冬ですが、初夏に白い清楚な香りのよい花を咲かせます。

原産地は、現在の山口県萩市。萩市に植えられていた温州みかんが突然変異し夏みかんになりました。

萩では、明治に入って職を失った武士たちに夏みかんの栽培が奨励されたという歴史があり、当時植えられた夏みかんの木が現在も萩市内に多く残されているそうです。

正式には、夏みかんではなく夏代々(なつだいだい)という名前です。

明治17年に上方に出荷するにあたり、大阪の仲買商人から「夏みかん」に変更するよう言われ、それが広く知られるようになりました。

  • ミカン科の常緑低木
  • 原産地は日本
  • 開花時期は5月上旬から6月中旬

夏みかんの花

紫陽花(あじさい)

梅雨の景色を彩る紫陽花ですが、花びらと思われているのは萼(がく)が大きく発達した装飾花です。

では、本来の花びらはどこにあるかというと、花の中央にある小さな玉。あれが紫陽花の花びらです。

現在、私たちが紫陽花の花と呼んでいるのはホンアジサイ。

日本に自生していたガクアジサイが変化してできた品種です。

小さな花が集まって、まるで手まりのような球状になることから、手まり咲きと呼ばれます。

  • アジサイ科の落葉低木
  • 原産地は日本
  • 開花時期は6月から7月

紫陽花

橘(たちばな)

初夏に白い花を咲かせるは、不老長寿を象徴する木として、御所の庭に「左近の桜」と並んで「右近の橘」として植えられていました。

日本書紀には、垂仁天皇から不老長寿の霊果を探してくるよう命じられた田道間守公(たじまもり)が中国から持ち帰ったと伝わります。

酸味の強い黄色い果実は、食用としてよりも、果実の皮が薬用や香料に使われます。

  • ミカン科の常緑小高木
  • 原産地は日本
  • 開花時期は6月から7月

橘

昼顔

朝顔と同じく朝に開花しますが、昼になっても花がしぼまないことから、「昼顔」と名づけられました。

朝顔に似た花は直径5~6cmと小ぶりで、薄いピンク色の花を咲かせます。

ですが、朝顔とは異なり、昼顔は日当たりの良い平地に自生するいわば雑草。

種を結ばず、地下茎を伸ばして増えていく繁殖力の強い植物です。

  • ヒルガオ科の蔓性多年草
  • 原産地は日本・中国
  • 開花時期は6月から8月

昼顔

芍薬
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