霜降(そうこう)は、二十四節気という太陽の動きをもとにした季節の区分の一つで、黄経210度を太陽が通過する日が霜降の日です。
現在の暦(新暦=グレゴリオ暦)では、10月23日頃から11月6日頃までの約15日が霜降の時期です。
江戸時代まで使われていた旧暦(太陽太陰暦)では、9月・戌の月の中気(月の後半という意味)のためが九月中霜降とも称しました。
霜降の季節
霜降(そうこう)は、立秋から始まった秋の最後の二十四節気です。
霜降とは、秋も終わりに近づき、霜が降りる時期を意味します。
朝晩も冷え込みだして肌寒さを感じるようになります。
北の地方では早くも霜が降りはじめ、冬の足音が近づいてくるのが分かります。
野原では、花は枯れてしまいますが、代わりに紅葉が山を彩ります。
鮮やかな紅葉を指す錦秋という言葉がありますが、本当に美しい言葉ですね。
七十二候
二十四節気は、それぞれが約15日間ありますが、二十四節気をさらに3等分した七十二候という季節の区分があります。
霜降には、次の七十二候が含まれます。
霜降 初候 霜始降(しもはじめてふる)
10月23日頃から10月27日頃まで。
朝夕も冷え込むようになり、田畑に初めての霜が降りる頃です。
霜降 次候 霎時施(こさめときどきふる)
10月28日頃から11月1日頃まで。
秋の終わりにしとしとと小雨が降る時期です。
雨の音までも行く秋を惜しむように侘しく聞こえてきます。
霜降 末候 楓蔦黄(もみじつたきばむ)
11月2日頃から11月6日頃まで。
楓(かえで)や蔦(つた)の葉が、赤や黄色に鮮やかに色づき始めます。
霜降の食べ物
さつまいも
ほくほくとした甘みが美味しいさつまいもは、8月から11月が収穫期ですが、2~3ヶ月貯蔵することで余分な水分がなくなり甘みを増すため、10月から11月頃が最も美味しい旬の時期です。
さつまいもの原産地は、遠く中南米ですが、現在は世界の生産量の90%がアジアで生産されています。
日本には、1600年代初めに中国から琉球(現在の沖縄)に伝わりました。
琉球から種子島、種子島から薩摩藩に伝わり栽培が始まったのが1700年代の初め。
当時は中国から来た芋ということから「唐芋(からいも)」と呼ばれていました。
薩摩藩での栽培が始まって間もなくの1732年、享保の大飢饉が西日本を襲います。
時の将軍、徳川吉宗が青木昆陽らに命じ、やせた土地でも育つさつまいもの栽培が江戸でも始まると、薩摩から来た芋として「薩摩芋(さつまいも)」と呼ばれるようになりました。
食物繊維とビタミンCが豊富で、さつまいもを切ると断面ににじみでる白い液体はヤラビンという成分が食物繊維との相乗効果で便秘の解消に力を発揮します。
とんぶり
プチプチとした食感から、「畑のキャビア」の異名を持つとんぶりは、アカザ科のホウキ草という植物の種です。
秋田県を中心に食べられてきましたが、現在ではすっかり全国区の秋の食材ですね。
わずか直径1~2mmの小さな緑色の実には、ビタミンKやリン、そして貧血解消に効果的な鉄分を豊富に含んでいます。
秋が深まる10月から11月は、とんぶりが最も美味しい旬の季節です。
柿
柿は日本を含む東アジアが原産地ですが、欧米には日本から伝わったため学名は「kaki」となったのだそう。
柿は種類が大変多く、
- 富有柿、次郎柿、御所柿などの甘柿
- 平核柿、西条柿、蜂谷柿などの渋柿
と、あわせて800種類以上もの種類があります。
9月初めから早生が出荷されますが、柿の旬は10月から11月。
渋柿の渋みは、シブオールというタンニンから出ますが、実は甘柿と渋柿で含まれるシブオールの量は変わりません。
甘柿が渋柿と違って渋みを感じないのは、シブオールが黒く固まって水に溶けない状態になっているためなのです。
柿の実に、ゴマと呼ばれる黒い斑点がはいっていますが、あれこそシブオールだったんですね。
一方の渋柿は、シブオールが水に溶ける状態で果実に含まれていますので、渋抜きせずに食べると渋くて大変ということになります。
柿は、カロティンやビタミンCを多く含み、風邪予防やむくみ・二日酔いの改善に効果的な果物です。
とらふぐ
ふぐの中でも最高級で、ふぐの王様なのがとらふぐです。
秋ごろから水揚げされますが、産卵期前の冬が旬。
下関市の南風泊(はえどまり)港のとらふぐの初セリはニュースにもなるなど、秋の風物詩でもありますね。
1尾数万円にもなる高値で取引されますが、刺身・唐揚げ・鍋・白子とふぐだけでコースが成り立つあたり、さすがはふぐの王様・とらふぐの貫録勝ちと言ったところでしょうか。
縄文時代の遺跡からふぐの骨が出土するなど、昔から食べられてきた魚ですが、現在の高値を知ったら縄文人もびっくりすることでしょう。
霜降の時期の花・植物
どんぐり
童謡でおなじみのどんぐり。小さいときに拾って遊んだ思い出をお持ちの方は多いと思います。
どんぐりは、かし・なら・かしわ・しいなどブナ科コナラ属の木の果実の総称です。
共通点は、
- こげ茶色をしている
- 固くてすべすべしている
- お椀のような帽子をかぶっている
- 先端がツンととがっている
などですが、細長いフォルムはコナラやミズナラ、丸くて栗のイガのような帽子を被っているのはクヌギの木と、どんぐりの形はそれぞれの木によって違いがあります。
木の実をとって暮らしていた縄文時代は人間にとっても貴重な食糧でしたが、どんぐりは今も動物たちの越冬を支える大きな役割を担っています。
楓(かえで)
秋の深まりとともに、赤く色づく楓は、まさに紅葉の主役。
楓の木は100種類以上ありますが、日本で主に見られるのは赤ちゃんの手のような葉を持つ「イロハカエデ」という種類です。
詩歌の世界で「五個の景物」と言われる、雪月花・ほととぎす・紅葉の5つは、日本の美意識を象徴してきました。
平安時代の貴族たちが始めた紅葉狩りは、今でも秋に欠かせない行楽ですよね。
- カエデ科の落葉高木
- 原産地はアジア
あざみ
250種類ほどもあるあざみの花は、北半球に広く分布しており、日本では約50種類が自生しています。
あざみは、深い切れ込みの入った葉と紫色の丸い針山のような花を咲かせますが、花や総苞にとげがあり、下手にさわると痛い思いをする花です。
あざみのとげのおかげでデンマークとの戦いで国を守ることができたという逸話があるスコットランドでは、あざみが国花に定められています。
- キク科アザミ属
- 原産地は北半球
- 開花時期は5月から11月
けいとう
けいとうの花は、炎のような濃い赤やオレンジ・ピンクをしており、秋の花壇ではひときわ目立つ存在です。
先端が平たく帯状に扇のように広がる花の形が、鶏のとさかに似ているため、鶏頭(けいとう)という名前が付きました。
日本には、奈良時代に伝わってきましたが、当初は「韓藍(からあい)」と呼ばれたそうです。
- ヒユ科の一年草
- 原産地はインド・アフリカなど熱帯地方
- 開花時期は7月から11月
次の二十四節気は立冬(りっとう)です