冬至(とうじ)は、二十四節気という太陽の動きをもとにした季節の区分の一つで、黄経270度を太陽が通過する日が冬至の日です。
現在の暦(新暦=グレゴリオ暦)では、12月22日頃から1月4日頃までの約15日が冬至の時期です。
江戸時代まで使われていた旧暦(太陽太陰暦)では、11月・子の月の中気(月の後半という意味)のためが十一月中冬至とも称しました。
冬至の季節
冬至(とうじ)は、立冬から始まった冬の4番目の二十四節気です。
冬至の日は、太陽が昇る高さが1年の中で最も低くなるため、夜の時間が一番長い日として知られていますね。
昔の人たちは、冬至の日は太陽の力が弱まって夜が長くなると考えていました。
そして、冬至の日を境に昼の時間が長くなることは、太陽が再び力を取り戻す証に他ならなかったのです。
多くの原始文明にとって、太陽は生命の源であり信仰の対象とされていました。
そのため、冬至の日には太陽(生命)の復活・再生を祝う祭礼が世界の各地で行われてきたのです。
中国では、冬至の日は、暗い冬が去り明るい春が来る「一陽来復」であり、かつでは冬至が1年の始まりだった時期もありました。
もともと日照時間の短い北欧では、陽射しが戻る冬至は待ち焦がれる対象であり、「ユール」というお祭りが今も盛大に開かれます。
イエス・キリストの誕生を祝う日であるクリスマスも、キリスト教とユールが融合して生まれた行事なのです。
日本でも、冬至の日が旧暦の11月1日にあたる年は、「朔旦冬至(さくたんとうじ)」と呼ばれて、宮中で盛大な祝賀行事が開かれたそうです。
現在では、冬至の日には、かぼちゃと小豆を一緒に煮た「冬至かぼちゃ」を食べて柚子湯に入り、無病息災を祈る習慣があります。
七十二候
二十四節気は、それぞれが約15日間ありますが、二十四節気をさらに3等分した七十二候という季節の区分があります。
冬至には、次の七十二候が含まれます。
冬至 初候 乃東生(なつかれくさしょうず)
12月22日頃から12月25日頃まで。
草木が葉を落とす冬枯れの中、夏枯草(かこそう)だけが緑の新芽を芽吹く時期です。
夏枯草は、草木が茂る初夏に黒色化して枯れたように見えるため、夏至の初候「乃東枯」にも登場します。
冬至 次候 麋角解(さわしかつのおる)
12月26日頃から12月30日頃まで。
麋(び・さわじか)とは、トナカイやヘラジカなど、大鹿のことです。
鹿の角が生え変わるのは春ですが、トナカイなど大鹿の角は冬に生え変わります。
中国には、トナカイやヘラジカが生息していないため、シフゾウ(四不像)という伝説の珍獣のことをさすという説があります。
冬至 末候 雪下出麦(ゆきくだりてむぎのびる)
12月31日頃から1月4日頃まで。
降り積もった雪の下で、麦が芽を出し始めます。
寒さが本格的になる中、麦は雪の下でじっと春を待つのです。
冬至の食べ物
柚子(ゆず)
中国の揚子江上流域が原産地とされる柚子ですが、古くから日本でも栽培されてきた歴史のある柑橘類です。
寒さに強いため、東北地方でも栽培できる特性があり、香りの高い柚子は日本料理に欠かせない存在ですね。
柚子の強い香りは邪気を祓うとも考えられていたことから、
- 柚子 ⇒ 融通がきく
- 冬至 ⇒ 湯治と読みが同じ
であるとして冬至に柚子湯に入る習慣が生まれました。
冬が旬の柚子は、クエン酸やビタミンCが豊富に含まれており、柚子湯には冷え性や風邪を予防する効果があるとされます。
韮(にら)
中国が原産地のニラが、日本に伝わったのは9世紀の頃とされます。
古事記や万葉集にも登場するほど、ニラは早い段階で広く知られるようになりました。
ニラの持つ滋養強壮作用から、ニンニクなどと共に「五葷(ごくん)」として仏教や道教では食べることが禁じられてきました。
- 仏教 ⇒ ニンニク、ニラ、ヒル、ネギ、ラッキョウ
- 道教 ⇒ ニンニク、ニラ、大ニラ、アブラナ、コエンドロ
「五葷(ごくん)」にあげられる野菜に共通しているのは、独特のきつい匂いがあること。
ニラの匂いのもとであるアリシンは、ビタミンB1の吸収を助け、疲労回復に効果があります。
牡蛎(かき)
日本で獲れる牡蛎は、広島で養殖される「真牡蛎(まがき)」や天然の「岩牡蛎」など25種類。
ほとんどが、11月頃から美味しくなり、産卵期を前に身が肥える3~4月頃に最も美味しくなります。
「牡蛎を食うのも花見まで」というのは、牡蛎の美味しい時期を表す言葉であると同時に、夏場の牡蛎は、菌が繁殖しやすく食中毒の危険があることを指しているようです。
英語でも、同じように「Rのつかない月(5月から8月)は牡蛎を食べるな」というのは面白いですね。
牡蛎は、岩場に付着しほとんど動かないため、筋肉が発達せずに大部分が内臓という貝です。
そのため独特の食感と味わいが苦手という方も多いですが、牡蛎は「海のミルク」と呼ばれるほど栄養価が高く、鉄・胴・亜鉛などのミネラルやタウリンを豊富に含みます。
フライや鍋の具材として、積極的に食べたいですね。
伊勢海老(いせえび)
腰が曲がり、ひげの無い姿が、不老長寿をあらわす縁起物として、正月や婚礼などにお目にかかる機会が多い伊勢海老。
大きいものは体長40cmほどにも育ち、日本で獲れる海老としては最大クラスで、高価格で取引されます。
伊勢海老の姿造りといった豪勢な食べ方もされますが、大きさ・価格の割には食べられる部分は少ないというのは残念としか言いようがありません。
せっかくの伊勢海老です。殻をみそ汁の出汁に使うなど、無駄なく使い切りたいですね。
冬至の時期の花・植物
満作(まんさく)
冬枯れの山の中で、満作は一早く黄色い花を咲かせて、春の訪れを告げる花です。
満作の花が
- 多ければ豊作
- 少なければ不作
と、満作の花でその年の稲の作柄を占ったことから、「満作」という名前にが付いたと言われています。
- マンサク科の落葉小高木
- 開花時期は1月から3月
- 原産地は日本
カレンデュラ
カレンデュラという名前は、開花時期の長さから「1ヶ月」という意味のラテン語から来ており、カレンダーの同じ語源を持ちます。
花が黄金色の盞(さかずき)のように見えることから、和名は「金盞花(きんせんか)」と名付けられました。
ヨーロッパでは食用ハーブとして、胃薬や皮膚薬に長く用いられてきました。
現在でも、乾燥した花びらからカレンデュラの成分を抽出したオイルがスキンケア用品などに活用されています。
- キク科の一年草・多年草
- 開花時期は12月から5月
- 原産地は地中海沿岸
ポインセチア
ポインセチアは、メキシコの山野に自生していたユーフォルビア・プルケリマを改良し生み出された園芸種です。
日本に入ってきたのは明治時代の初め。
現在では、クリスマスを彩る花として「クリスマスフラワー」と呼ばれるポインセチアですが、大酒飲みで赤い顔をしている伝説の生き物・猩々(しょうじょう)に似ているとして「猩々木(しょうじょうぼく)」なんていう和名が付けられました。
赤や白い花びらに見える部分は、苞(ほう)の部分で、花は苞の中心にある黄色い小さな丸い粒です。
原種は、軽い霜に当たっても枯れない耐寒性を持っていましたが、園芸種として生み出されたポインセチアには耐寒性が引き継がれなかったため、最低気温10度以上で管理する必要があります。
多く出回るのがクリスマスと寒い時期のため、1年で枯れてしまうことが多く、草花と思われていますが本来は低木です。
暖かい宮崎や沖縄では数mに育ったポインセチアを見ることができます。
- トウダイグサ科の常緑性低木
- 開花時期は12月から2月
- 原産地はメキシコ・中央アメリカ
クリスマスローズ
花の少ないクリスマスの頃に白い花を咲かせることから、「クリスマスローズ(クリスマスに咲くバラ)」と名付けられました。
ロマンチックな花名とは裏腹に、根に毒を含むことから、「Helleborus(ヘレボルス)」という学名はギリシア語の「helein(死に至らしめる)」と「bora(食べもの)」に由来します。
また、クリスマスローズの香りには悪魔を祓う力があるとして、かつてのヨーロッパでは病人の治療(?)に使われたりもしていました。
日本には江戸の末期から明治の初期に入ってきましたが、当初は薬用植物として認識されていました。
- キンポウゲ科の多年草
- 開花時期は12月から2月
- 原産地はヨーロッパの中南部
次の二十四節気は小寒(しょうかん)です