夏至(げし)は、二十四節気という太陽の動きをもとにした季節の区分の一つで、黄経90度を太陽が通過する日が夏至の日です。
現在の暦(新暦=グレゴリオ暦)では、6月22日頃から7月6日頃までの約15日が夏至の時期です。
江戸時代まで使われていた旧暦(太陽太陰暦)では、5月・午の月の中気(月の後半という意味)のため五月中夏至とも称しました。
夏至の季節
夏至は、立夏から数えて4番目の夏の二十四節気です。
夏至の日は、太陽の南中高度が最も高くなる日です。
そして、北半球では昼の時間が1年で最も長くなる日として知られています。(南半球では逆に昼が最も短くなります。)
夏至に対して、冬至は1年で最も昼が短くなる日ですね。夏至と冬至の昼の時間を比べると、東京で約4時間40分もの違いがあります。
ですが、夏至の日は梅雨の真っただ中。お天気によっては陽が差さないため、あまり昼の長さを感じないかもしれません。
あと少しで梅雨も明け、夏の暑さが訪れます。
南中高度とは
七十二候
二十四節気は、それぞれが約15日間ありますが、二十四節気をさらに3等分した七十二候という季節の区分があります。
夏至には、次の七十二候が含まれます。
夏至 初候 乃東枯(なつかれくさかかる)
6月22日頃から6月26日頃まで。
草木が勢いよく生い茂る中で、靭草(うつぼぐさ)が枯れ始めます。
冬至の時期に新芽が出て夏至の時期に枯れることから、靭草には「夏枯草(かこそう)」という別の名称もあります。
夏至 次候 菖蒲華(あやめはなさく)
6月27日頃から7月1日頃まで。
アヤメの花が咲く頃です。
菖蒲と書いてアヤメともショウブとも読ませるので混乱しますが、端午の節句の菖蒲とは全く違う植物です。
夏至 末候 半夏生(はんげしょう)
7月2日頃から7月6 日頃まで。
半夏とは、烏柄杓(からすびしゃく)のこと。
漢方の生薬にも用いられる烏柄杓が生えて花を咲かせる時期です。
夏至の食べ物
水無月
水無月は、6月30日の夏越の祓に食べる和菓子として、京都を中心に親しまれています。
三角形のういろう餅の上に、邪気を祓うとされる小豆がのっているシンプルな和菓子です。
宮中で行われていた旧暦6月1日の氷の節句で、暑気払いのために臣下に配られていた氷のかけらを模したものと伝えられています。
茗荷(みょうが)
茗荷(みょうが)は、しょうがやわさびと同じぐらい食卓になじみ深い薬味です。
多くの野菜と同様に、1年中手に入りますが、6月から秋にかけてが旬となります。
茗荷と呼んで食べているのは、茗荷の花の蕾の部分。そのため花茗荷と呼ばれることもあります。
独特の香りには、
- 眠気を覚ます
- 熱を冷ます
- 解毒作用
といった作用があり、夏バテ防止にも力を発揮します。
食用に栽培しているのは世界の中でも日本だけのため、日本でのみ食べることができる野菜です。
冬瓜(とうがん)
夏が旬ながら、日持ちが良く冷暗所で保存すると冬まで持つことから「冬瓜」という名が付けられました。
原産地はインドですが、平安時代の書物にすでに記載されており、日本でも古くから親しまれてきた野菜です。
冬瓜は、95%が水分という低カロリーの野菜ですが、利尿作用があり身体を冷やす効果があるため、夏にぴったりな食材です。
飛び魚
飛び魚は、トビウオ科の魚の総称。日本近海には、約30種類の飛び魚が生息していますが、食用になるのはハマトビウオ属の数種類にとどまります。
6月から9月にかけて旬を迎え、タタキや刺身にして食べると美味しい魚です。
また、飛び魚の煮干しから引く出汁がアゴダシです。
かつおぶしより上品なコクがあり、高級品として近年特に人気を集めています。
ハマチ
初夏から秋にかけてが旬のハマチは、成長に合わせて名前が変わる出世魚、鰤(ぶり)の幼魚時の名称です。
鰤(ぶり)となるまでの名称は関東・関西では違いがあり、ハマチは40~50cmの大きさになったときに関西で使われていた名称です。
西日本でブリの養殖が盛んになり、40~50cmの大きさの段階でハマチとして全国に出荷されたため、ハマチの名前が全国に定着しました。
現在では天然のブリを区別するために、体長が80cm前後で重さ6kg前後の養殖のブリをさしてハマチと呼ぶようになっています。
夏至の時期の花
アヤメ
「いずれがあやめ、かきつばた」という慣用句があるように、アヤメとカキツバタ、そして花菖蒲は見分けるのが難しいアヤメ科の多年草です。
アヤメは、花びらに網目の模様があるのが特徴で、名前の由来ともなりました。
他の2つの花とも花びらの特徴で見分けることができます。
- カキツバタは、花びらの付け根に白い筋が1本入っている
- 花菖蒲は、花びらに黄色い斑紋がある
- アヤメ科の多年草
- 原産地は日本、東北アジア
- 開花時期は5月から6月
芍薬(しゃくやく)
花だけではなく葉も牡丹(ぼたん)とよく似ている芍薬ですが、牡丹が木なのに対し、芍薬は冬になると地上部は枯れ、根が休眠する多年草です。
牡丹と入れ替わるように、5月から6月にかけて開花します。
平安時代に渡来しましたが、乾燥させた根っこに薬効があり、当初は漢方薬として伝わりました。
室町時代から花が観賞されるようになり、江戸時代には品種改良が盛んになり多数の品種が栽培されるようになりました。
花の美しさから、「顔佳草(かおよいぐさ)」という別名もあります。
- ボタン科の多年草
- 原産地は東アジア
- 開花時期は5月から6月
合歓(ねむ)
6月の花には甘い香りを放つものが多いですが、合歓の花もそうした香りのよい花です。
河原などの水辺に自生し、細長い刷毛の形に似た薄いピンク色のふわふわとした花を咲かせます。
1輪に見える花は、実は小さな花が10から20個集まって出来ています。
夜になると左右の小さな葉が合わさって垂れさがる様子が、木が眠っているように見えることから、合歓の木(ねむのき)という名前が付きました。
- マメ科の落葉高木
- 原産地は日本、中国、朝鮮半島
- 開花時期は6月から8月
烏柄杓(からずびしゃく)
烏柄杓は、高さ10cmほどと背丈の低い田畑に生える雑草です。有史以前に中国から渡来した史前帰化植物の一つです。
6月頃に、緑色の苞(ほう)を持つ花を咲かせますが、苞(ほう)の形が人ではなく烏が使う小さい柄杓のようだとして烏柄杓の名前が付きました。
地下にできる塊茎は、咳止めや酔い止めの効能がある漢方の生薬として用いられます。
中国では半夏(はんげ)という名前ですが、これがそのまま生薬の名称にもなっています。
- サトイモ科の多年草
- 原産地は中国、朝鮮半島
- 開花時期は5月から8月
次の二十四節気は小暑(しょうしょ)です